相続税の取得費加算の特例とは??

公開日:2020年02月13日

相続税の取得費加算の特例

相続した財産を譲渡すると譲渡益が生じることがあります。譲渡益には税金がかかります。

財産の取得費は譲渡益から控除することが出来ますが、財産を相続した時に納付した相続税は、原則として、取得費とすることは出来ません。

しかし、特例の適用を受けることで納付した相続税額の一部を取得費に加算して譲渡益から控除することが出来るようになります。

そうすることで、譲渡益にかかる税金を軽減することができるお得な制度なので、相続税額を納付した人で相続財産の譲渡を検討している人は絶対に知っておいた方が良い特例になります。

1.取得費加算の特例とは??

「取得費加算の特例」とは、相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することが出来るという特例です。

この特例は譲渡所得のみに適用がある特例ですので、株式等の譲渡による事業所得及び雑所得については、適用できません。

2.取得費加算の特例を受ける為の要件

取得費加算の特例は、次の3つすべてに該当しなければ受けることは出来ません。

 

1.相続や遺贈により財産を取得した者であること。

2.その財産を取得した人に相続税が課税されていること。

3.その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

 

通常は、被相続人が死亡した日に相続開始があったことを知ったことになるでしょうから、被相続人の死亡から概ね3年10ヶ月以内に譲渡していることが要件と考えられます。

 

3.取得費に加算する相続税額

取得費に加算する相続税額の算式

取得費に加算する相続税額は、相続又は遺贈の開始した日により計算方法が異なります。

ここでは、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得した財産を譲渡した場合の計算方法を説明します。

 

 

平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得した財産を譲渡した場合の算式(このコラムの下記に記しております)

 

算式中の言葉の説明

「その者の相続税」は、今回、この特例を受けようとする人が、対象となる相続において納付した相続税額のことです。

 

「その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価額」は、今回譲渡した財産の、相続時の相続税評価額のことです。

 

「その者の相続税の課税価額」とは、相続税申告書に記載されていますので、そちらで金額をご確認ください。

 

「その者の債務控除額」とは、今回、この特例を受けようとする人が、対象となる相続において、相続税の課税価格を計算する際に控除した債務及び葬式費用の額のことです。

4.取得費加算の特例を受ける為の手続き

この特例を受ける為には確定申告をすることが必要です。

確定申告書には、次のような書類の添付が必要です。

 

・相続税の申告書の写し

・相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書

・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書【土地・建物】)や株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

 

5.注意点とまとめ

なんだか小難しい言葉を並べてしまいましたが、取得費加算の特例を受ける為の要件、特に『相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに』という条件ががあったな~と頭に入れておくことが大切だと思います。

また、相続で取得した空き家を譲渡した場合の特例として、3000万円の特別控除などがございます。

この特例との併用はできませんので、どの特例を受けるのが良いかなど、税理士さんに相談して進めていくことが良いと思います。

 

 

平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得した財産を譲渡した場合の算式
取得費に加算する相続税額の算式