相続で取得した空き家は早めに売却を!
2015年に空家対策法が施行され、増え続けている空き家の問題にメスが入りました。倒壊の危険性が高い、衛生上有害の恐れがある、著しく景観を損なっているなど、特定の空き家に対して固定資産税、都市契約税の軽減措置から外され、最大で固定資産税が6倍になります。
私のところにも空き家の売却につていの問い合わせが増えてきております。
ここでは、『相続で取得した空き家』の売却での特別措置、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」についてご紹介します。
1.被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」とは、一定の要件を満たした場合、相続によって取得した空き家を売却して得た譲渡所得を最大3,000万円控除するという特例です。
譲渡所得とは、不動産の売却によって生じる譲渡益のことを言います。
譲渡所得は下記の算出式を用いて計算します。
譲渡所得の算出式
譲渡価格 ― (取得費+譲渡費用)
特例適用後の譲渡所得
譲渡価格 ― (取得費+譲渡費用) ―特別控除3,000万円
相続や遺贈によって取得した空き家の場合、取得費は被相続人がその不動産を取得した時にかかった費用となります。取得費がわからない場合には、譲渡価額の5%を取得費とすることも可能です。
2.特例の適用を受けるための要件のポイントと注意点
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の適用を受ける為には、一定の要件を満たす必要があります。
家屋の適用要件
■昭和56年5月31日以前に建築された区分所有登記(マンション等)以外の建物であること
■相続開始直前の段階で被相続人が一人で居住していた家屋であること
■売却時に一定の耐震基準を満たしていること
■相続開始から売却までの間に居住用や他の用途として使用されていないこと
特例適用要件
■相続及び遺贈によって取得した被相続人の居住用家屋又は家屋と敷地を売却すること
■相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
■売却代金が1億以下であること
■取得費加算の特約等、併用のできない他の特例の適用を受けていないこと
■同一の被相続人から取得した他の不動産でこの特例の適用を受けていないこと
■売却相手は親や子、夫婦など特別な関係のある人ではないこと
適用要件のポイント
ポイント1:売却する家屋は完全な空き家であること
この特例の目的は空き家を減らすことです。その為、特に問題となってくるのが以下の2つの要件になります。
家屋適用要件
■昭和56年5月31日以前に建築された区分所有登記(マンション等)以外の建物であること
■相続開始直前の段階で被相続人が一人で居住していた家屋であること
■売却時に一定の耐震基準を満たしていること
■相続開始から売却までの間に居住用や他の用途として使用されていないこと
相続開始直前に同居していた方がいる場合や、相続開始から売却までの間に人に貸していたり、家屋を取り壊した土地を駐車場などとして利用したり、他の用途に使用していた場合には適用されません。
ポイント2:売却する家屋の建築時期と耐震基準
特例の適用を受けることが出来る家屋と敷地は昭和56年5月31日以前に建築された家屋又は家屋と敷地となります。
建築時期は登記簿謄本や登記事項証明書の表題部、原因及びその日付という欄で確認することが出来ます。
また、区分所有権物は対象外となり、耐震基準を満たしていない家屋を売却する場合には、耐震リフォームを行ってから売却する必要があります。
しかし、リフォームにかなりの費用がかかってしまう、リフォームをしても売れないかもしれないと不安を持たれる方もいらっしゃると思います。
その場合、家屋を取り壊して更地にして売却する場合でもこの特例は適用されますので、ご自身のケースだとどうするべきかをご相談されるのがよいでしょう。
ポイント3:売却期間の指定と譲渡価格の上限
この特例のとこ憂いを受ける為には、相続開始日より3年を経過する日の属する12月31日までに売却する必要があります。また、譲渡価格は1億以下が対象となります。不動産売買を行う場合、固定資産税の精算を行う必要がある為、その費用を含めると譲渡価格が1億を超えてしまうというケースもあります。
譲渡価格を決める際には、ギリギリ1億円以下に設定するということは避けておくようにしましょう。
ポイント4:家屋が主体となる特例である
この特例は家屋と家屋及び敷地が対象となります。家屋と土地を別々の相続にて相続した場合、家屋を相続した相続人は特例の適用を受けることが出来ますが、土地を相続した相続人は特例の適用を受けることが出来ないため注意が必要です。
3.特例適用に必要な書類
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を受ける為には、下記の書類が必要にとなります。また、譲渡所得に対する特例となりますので、確定申告を行う必要があります。
家屋(家屋を含む敷地)を売却した場合
■売買契約書の写し
■譲渡所得の内訳書
(確定申告書付表兼計算明細書)
■登記事項証明書等下記の内容がわかる書類
・相続又は贈与によって取得したこと
・昭和56年5月31日以前の建築であること
・区分所有建物でないこと
■耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
家屋を取り壊して売却した場合
■売買契約書の写し
■譲渡所得の内訳
(確定申告書付表兼計算明細書)
■登記事項証明書等下記の内容がわかる書類
・相続又は贈与によって取得したこと
・昭和56年5月31日以前の建築であること
・区分所有建物でないこと
■被相続人居住用家屋等確認書
4.併用可能なその他の特例
不動産の売却によって生じる譲渡所得に対する特例は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」以外にも多くの特例が存在します。
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は相続や遺贈によって取得した家屋が対象となる特例ですが、この特例と併用ができる特例は以下の通りです。
1.居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例
この特例はマイホームが対象となる特例ですが、以前に住んでいた家屋(家屋及び敷地)であっても住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している場合には適用を受けることが出来ます。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特例と「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を併用する場合には、合わせて3,000万円までとなります。
2.マイホーム等の買い換えに関する特例
居住用財産(マイホーム)の買い換えを行った際には要件を満たすことで以下の特例の適用を受けることが出来ます。
―マイホーム等の買い換えに関する特例―
●特定のマイホームを買い換えた時の特例
●マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
●特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
上記でご紹介した特例は要件を満たしていれば併用することも可能です。住宅に適用される特例制度の中で、「相続税の取得費加算の特例」の併用はできません。相続税の取得費加算の特例と被相続人の居住用財産を売ったときの特例はいずれかを選択する形となります。
5.まとめ
近年増加傾向にある空き家は相続によって取得した実家などが多く存在します。
すでにご自身で生活する自宅をお持ちの場合には、どうするべきかを悩まれることと思います。
ここで取り上げた「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日、「相続税の取得費加算の特例」は相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡する必要があります。
売却ではなく空き家を貸すということも可能ですが、安易に貸すという選択をせず、賃貸か売却か慎重に検討する必要もあります。
また、相続前後に実家をどうするのか??など、予め親子や相続人の兄弟間でしっかりと話し合っておくことが重要です。
相続によって住む予定のない実家等を取得した場合には、なるべく早くどうするのかを決断するようにしましょう。